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2016.06.25
活動報告
「JIMA2016 会員フォーラム」演者発表要旨
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 「JIMA2016 会員フォーラム」演者発表要旨






   ■日時 平成28年6月25日(土) 14:15~17:00

   ■場所 東京駅前・あすか会議室




 <一般口演>



(1)「電子カルテ端末リモートアクセスの実際と課題」

       山野辺 裕二 (社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 法人本部情報部)


要旨: 恵寿総合病院では2014年からサーバー・端末の仮想化基盤を広く採用している。場所を問わず自分専用の環境が利用でき、登録単語や辞書学習が最適化された日本語環境や、自分用の電子メール環境、デスクトップ上の書類などが院内どこからでも使用できる。接続を切断しても作業内容が保持され、別の場所から接続すると再開できる。このことは病棟などで画面が開いたまま放置されている端末があっても、それを遠慮なく閉じ自分の端末を呼び出して作業できることを意味する。放置端末を誰もが切断できることはセキュリティの面でも効果が高い。このように端末の仮想化は、利便性とセキュリティの面で予想以上の効果をもたらした。

 これを拡張して、休日夜間などの専門医による救急医療の後方支援、職員のワークライフバランスの確保、新型インフルエンザのような新興感染症流行時の在宅勤務、BYODへの対応検討など、さまざまな需要に対応するため、院外から電子カルテ端末を利用できるリモートアクセスのしくみを2015年から導入している。

 端末の制限や多要素認証を付加し、職員は個人の端末を使ってインターネット上から仮想端末を利用できる。このような環境の構築によって、職員は院外からでも院内と全く同じ環境で電子カルテを利用することができる。しかしこのことは、無診察投薬などコンプライアンス上院外からできてはいけない業務も可能にしてしまう。これに対し院外からできる業務を制限することも考えられるが、システム構成を複雑にしてしまうことから採用していない。かわりに利用できる職員を一部の常勤医師に限定して「できるけれどしてはならないこと」等を説明し、詳しい運用マニュアルを用意するなど、野放し状態で利用されないような体制を整えている。現実には院外だけでなく院内医局の自分の机で使用している医師もおり、実質的にはBYODに近い状態になっている。

 上記のような院内利用も踏まえて考えると、ある記録が院内と院外のどちらで入力されたのかを識別しにくいという問題がおきる。アクセスログを確認すれば端末情報からリモートアクセスであることは確認できるものの、端末の位置情報まではわからず、電子カルテの画面上では識別できない。そのため院外からの指示入力などの場合はその旨明記するような運用上の工夫も必要である。このようにリモートアクセスを実際に運用してみると、さまざまな課題が浮かび上がってきている。
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(2)「個人情報保護法と健康医療情報」

       水島 洋(国立保健医療科学院・ITヘルスケア学会代表理事)


要旨: 個人情報保護に関しては、日本の中に個人情報保護関連法(条例)が2000個もあることからこれまで混乱していたが、昨年「個人情報保護法」が改正され、本年1月からは個人情報保護委員会も立ち上がり、日本における個人情報保護の仕組みができつつある。その一方で医療情報に関する個人情報保護については、厚生労働省、文部科学省による「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」や研究倫理に関するガイドラインに示されている程度で、しっかりとした体制ができていないのが現状である。さらに、健康情報に関してはガイドラインすらなく、これからの活用が期待されている個人健康情報というビッグデータの収集や利用についての規範が存在していない。

 疫学などの医学研究においては、匿名化した情報を用いて解析することが基本となっており、匿名化のために名寄せや連結解析、多年度にわたる解析などがむずかしくなっている。しかし、実名における解析は同意を得ることなどによって可能であり、個人情報保護法でも可能な配慮がなされている。実名解析することはさまざまな解析をする上において有効であり、今後の医学・疫学研究においてその重要性が増してくると考える。特に、個人がさまざまな健康情報を別々なサイトに登録している場合や、さまざまな機関にまたがる情報の連結、障害にまたがる情報解析などで活用される仕組みであろう。

 また、医療においてはマイナンバーに代わって医療用IDの導入が検討されているが、マイナンバー制度の趣旨から考えて医療だけにわけたIDを作ることの意味があるのか疑問である。一方で、日本年金機構やJTBなどで問題となったランサムウェアなどの標的型メール攻撃によって、インターネットにおける個人情報流出事件も多数発生している中で、漏洩策も重要になってくる。攻撃者の技術も高度で巧妙化してくる中で、情報を扱うものの意識の向上や漏れない工夫とともに、自動車のエアバッグのような安全装置の開発も必要と考える。




(3)「医療啓発活動とインターネット」

       東丸 貴信 (東邦大学医療センター佐倉病院)

 (掲出準備中)



(4)「糖尿病療養に影響をおよぼす生活背景と心理をスパースモデリングで
    多変量解析する試みと遠隔医療への応用」

       森田 巧 (JIMA運営委員)
       松本 麻里 (公立昭和病院看護部、糖尿病看護認定看護師)


 要旨: 糖尿病は、体内のインスリン分泌や受容に問題が起き、摂取した食物エネルギーを正常に代謝できなくなる病気であり、治療の目的は、高血糖による合併症の予防や悪化を阻止することである。治療は食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせるが、これらは患者の生活そのものであるため、いつでも最良の治療を第一優先とした生活を営めるとは限らない。そこで、患者の家族支援などの生活背景や心理状況が、療養の質に強く関連する。

 今回、どの因子が糖尿病療養に影響を及ぼすかを、近年、自然現象の解析に使われ始めてきた「スパースモデリング」を応用して多変量解析した。「スパースモデリング」はビッグデータとは逆に、間引いたデータから真実を見出す手法であり、全データがそろうとは限らない自然データの集合から知を得るのに向いている。将来、遠隔医療でネット越しに患者と対面するにおいても、このような限られた情報から解析を行う技術が診療の一助として育っていくものと思われる。



(5)「医療情報の信頼性確保の取り組み2016」
    ~医療機関ホームページは医療広告規制の対象となっていくか?

       三谷 博明 (JIMA事務局長)


 要旨: 平成23年から24年にかけて開催された厚労省の「医療情報の提供のあり方等に関する検討会」でまとめられた「医療機関ホームページガイドライン」では、医療機関のホームページを医療広告規制の直接の対象とすることはしなかったが、医療広告ガイドラインに準じてホームページに掲載すべきでない事項を定義すると同時に、自由診療を行う医療機関に対しては、治療内容や費用に関する情報、治療のリスクや副作用等に関する事項の掲載を求め、ほぼ放任状態だった医療機関のホームページに一定の歯止めをかけることになった。

 ガイドラインの策定を促した要因は、美容医療サービス分野における消費者トラブルの増加であったが、その効果も少なく、国民生活センターのPIO-NET(消費生活相談データベース)に報告される相談件数が減ることがない状況を受け、昨年7月に消費者委員会から厚生労働大臣に対し、医療機関のホームページの適正化に向けた指導監督の実効性確保を求める建議がなされる事態となった。

 JIMAでは、本ガイドラインの通知が行われる以前から、インターネット上でいくつかのサイトを抽出し、定点観測ともいうべきものを行ってきたが、ガイドラインの前後で比較しても、大きな差はなく、ガイドラインの効果が十分でないのをみてきた。保険診療の医療機関サイトにおいても、自由診療ほど極端ではないが、ガイドラインの存在を意識してないと思われるような事例もあった。

 こうした状況を受け、本年3月に、「医療情報の提供内容等のあり方等に関する検討会」という、前回とよく似た名称の検討会が厚労省に設けられ、医療に関する広告、医療機関のウェブサイト等の内容のあり方に関する議論が再開されることになった。消費者委員会の建議では、医療機関のホームページについて、是正命令や命令に違反した場合の措置等を設けることにより医療機関に対する指導監督の実効性が確保されるよう、法令改正に向けた検討を行い、必要な措置を講ずることを求めているが、これを受けて、検討会では、今後、ネットパトロール等による監視体制の構築、消費者・患者等への注意の喚起、関係団体、インターネット関係者等が主体性を持って取り組んでいくとする方針案をまとめようとしている。

 この後、検討会の議論の流れによって、医療機関のホームページを広告とみなし強い規制の方向にもっていくのか、あるいは現行のガイドラインの周知・徹底という形式的な対応で終わるのか先は読めないが、いずれにしても、何らかの答えが出されるであろう。JIMAが長年取り組んできたトラストプログラムを社会的要請にあわせてどう展開していくか、サイトの自主基準のeヘルス倫理コードの見直しも含め、今後の重要な課題としていきたい。

 ※美容医療サービスとは、医療脱毛、脂肪吸引、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科、植毛などの「美容を目的とした医療サービス」を指すとされている。








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