「インターネット上の医療情報の提供と利用の実態に関する調査研究」報告

2000.04.10 研究報告
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 プレスリリース



 [2000年4月10日] ●「インターネット上の医療情報の提供と利用の実態に関する調査研究」報告


 




民間の任意団体「日本インターネット医療協議会」(辰巳治之理事長)は、本年1月から2月に かけて「インターネット上の医療情報の提供と利用の実態に関する調査研究」を行い、このほど その調査結果をまとめた。

近年、インターネットなどの新しい情報媒体を通じて発信、提供される医療情報が増えてきて いる。医療や健康に関する情報へのアクセスが容易になった反面、利用者にとっては多様な情報 の選択に迷ったり、間違った情報利用によるトラブルも懸念されるようになってきた。 そこで今回の調査では、患者・家族が医療機関に対しどのような情報を求めているか、情報源の ひとつであるインターネットをどのように利用しているかをアンケート調査するとともに、一般 公開されている医療機関のホームページに記載されている情報について複数の専門医による評価 を試みた。
その結果、医療機関に通院する患者・家族でインターネットを利用している人は、29施設の回答者 1,842人中、35%の割合で、うち、67.4%が「病気、健康管理に関する専門的 情報をもっと得たい」、また60.2%が「薬の効能、副作用になど関する専門的情報をもっと得た い」とネット上の医療情報の有効利用を期待している一方、インターネット上での個人情報の取り 扱いに関し、71.6%の人が「個人の医療情報が漏れて問題が起こる」と懸念していることがわかった。 また、大手検索サイトで案内されている医療機関のホームページ516件の医療情報の内容を、複数 の専門医が評価したところ、「問題があり」とされるホームページが7%あったほか、個人情報の 取り扱い方針をきちんと明示したサイトはほとんどなく、医療相談などで情報を送受信する時に、 暗号化などの対策が施されているサイトは皆無であるなど、情報の提供方法においても改善・検討 すべき点があることが示された。 同協議会では、今後もインターネットの医療利用が進んでいくみて、医療情報の利用者には情報の 慎重な選択、利用が、また、提供者側には利用者が情報を正しく安全に利用できるような配慮や工 夫が望まれるとしている。

同協議会は、医師、弁護士、患者代表らが集まり、1998年6月に発足した非営利団体。 情報提供者がホームページ上で医療情報を発信する際の「医療情報発信者ガイドライン」 を策定、一般利用者には「医療情報利用の手引き」を作成するなどして、公的規制に よらないネット医療推進のための環境づくりに取り組んでいる。


調査結果の概要は以下のとおり。

 (1)医療機関を利用する患者や家族を対象に、2000年1月下旬から2月中旬にかけて医療機関 に関する情報のニーズ、またインターネットの利用状況などを聞き取るアンケート調査を実施した。 回答数は、全国の大学病院や一般病院、診療所など29 施設1842人。平均年齢は 38.4歳で、 男性が40.6%、女性が55.6%であった。

まず、医療機関(病院や診療所)について知りたいと思う情報の内容は、「医療機関の名称」 61%(複数回答全体に対する割合、以下同様)、「所在地」61%、「電話番号」53.6%、 「交通手段」48.6%、「地図」44.6%、など基本情報に関するもの、また「診療時間」69.3%、 「診療 (休診)日」64.5%、「診療科名」64.1%、など業務に関する情報と並んで、 「診察・診断・治療に関する情報」65.3% 、「検査や検診の案内」45.5%、「代表的な 病気についての平均的な治療費の総額」44.7%、「代表的な病気についての治療・手術等 の実施数、成功率」42.2%、など医療の内容、提供体制に関する情報に対するニーズが 高かった。また、「医師に関する情報」に関しては、「特に専門とする分野」が71.4%と最 も高く、続いて「診療科目」53.7%、「勤務先医療施設名」48.4%、「出身大学」20%、 「学会認定医」17%などがあげられていた。 これらの情報が「どこで入手・閲覧できればよいと思いますか」の問いに対しては、「県庁・ 市役所・町村の役場」49.9%、「図書館や公民館などの身近な公共施設」42.1%と高率にな っていたが、「インターネット上に公開」を希望するのも40.3%あった。

次に、「あなたは医療について相談したい場合、どこに相談しますか」との問いに対しては、 「かかっている医療機関の相談窓口」69.7%が最も高く、続いて「主治医以外の医師(セカン ドオピニオン)」17.2%、「インターネットでの医療相談」13.2% 、「保健所 」13.0%など となっていた。

回答者のうち、インターネットを利用したことがある人は35%であったが、「利用したこ とがない」と答えた61%の中で、「今後利用したい」とするのが40.7%あった。「利用した ことがある」と「今後利用したい」を合わせると、59.8%になった。 「どのような医療情報サイト(ホームページ)が役立っていますか」との問いに対しては、 「診療所、クリニックにより運営されるもの」25.7%、「大学病院、研究機関により 運営されるもの」23.9%、「製薬会社等、医療系の民間企業により運営されるもの」14.1%、 「患者(支援)団体・個人( 非医療関係者)により運営されるもの」13.3%の順だった。 「今後、医療・福祉面において、インターネットのどのような利用法を期待しますか」との 問いに対しては、「病気、健康管理に関する専門的情報をもっと得たい」が67.4 %と最も高く、 続いて「薬の効能、副作用などに関する情報をもっと得たい」60.2%、「医師等専門家によ る個別の医療相談」37.4 %、「患者と医師間の意志疎通、コミュニケーションを深めたい」 21.7%、「在宅での医師や医療従事者による日常生活や精神面でのサポート」19.8%、「患者 どうしの交流、情報交換」18.8%、「通院治療に代わる遠隔での医療」16.0% となっていた。

昨今関心の高まっている個人情報の取り扱いに関して、インターネットを利用したことの ある回答者に対し、「インターネット上で個人の医療情報が漏れた時のリスクはどう評価 されますか」との問いに対しては、「個人の医療情報が漏れて問題が起こると思う」人が 71.6%いた。また、「インターネット上で個人の医療情報の流通に際し、情報の漏洩・改竄・ 悪用を防ぐためにはどのような工夫が必要と考えられますか」との問いに対して、「名前など 個人を特定できる情報は送らないほうがいい」が49.6% 、「個人の医療情報の扱いについて 法律で規制すべきである」が40.8%、「データや情報を暗号化して送るべきである」が34.0% であった。

 (2)インターネットの医療機関のホームページについて、発信主体者に関する情報の開示 状況や個人情報の扱い方針の明示状況等について調査を行った。 対象は、大手検索サイトの「YAHOO! JAPAN」の「医学」の案内ページよりリンクで たどれる医療機関のホームページ1,147件。 このうち、発信者の氏名が明記されていないのが 26.1%、住所が明記されていないのが 11.2%あった。
問い合わせ窓口の設置については、電話番号が明記されていないのが 12.6%、E-mailが 明記されていないのが24.1%あった。また、個人情報の取り扱いに関して、いわゆるPrivacy Statementのかたちにしてわかりやすく明示されているのは皆無であった。さらに、「情報 の暗号化等の対策」については、ホームページ上の医療相談などで個人の病気や健康に関 する内容を送受信するときの暗号化対策などがなされているサイトは確認できなかった。 また、ホームページを開設する医療機関の実在を示す認証シールを掲示しているサイト は、0.4%しかなかった。

 (3)上と同様に「YAHOO! JAPAN」の「医学」の案内ページよりリンクでたどれる内科、 小児科、皮膚科、精神科、脳神経外科の5科目から516のホームページを選び、提供されて いる医療情報について各科の複数の専門医による評価を行ったところ、内容面で、「問題あ り」とされたのが7%あった。その理由については、「一般の人が誤って情報を利用する恐れ がある」、「検証が不十分な情報を含んでいる」、「現在の標準的な医学からはずれている」、 「内容的に偏っている、記載事項に誤りがある」等があげられた。「問題あり」の指摘が最 も高かったのは皮膚科で、反対に指摘の最も少なかったのは内科であった。

付記: この研究は平成11年度厚生科学研究の「新技術媒体を利用した医療等に関する情報の提供と利用 の現状分析についての研究」(分担研究者辰巳治之・札幌医科大学医学部教授)の一部として実施したものです。



詳細報告書資料です。



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