「医療・保健分野におけるインターネット利用の信頼性確保に関する調査研究」

2004.05.31 研究報告
JIMAマーク

 プレスリリース



 
[2004年5月31日]



●「医療・保健分野におけるインターネット利用の信頼性確保に関する調査研究」






 特定非営利法人日本インターネット医療協議会(JIMA、理事長・辰巳治之札幌医大教授)は、このたび、厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金による医療技術評価総合研究事業の一環として「医療・保健分野におけるインターネット利用の信頼性確保に関する調査研究」を行い、報告書をまとめました。
 その結果、病院自身が運営主体と見られるWebサイトの開設率は昨年12月時点で約4割であることが判明しました。医療法における広告規制緩和の効果もあり、医療機関からの情報発信は徐々に進んでいるものの、この数字はまだ十分とは考えられないとみています。Webサイトを開設運用する目的は、病院の診療業務や機能を広報していくことが主であり、さらにインターネットの特性を生かした情報やサービスの提供を目ざしたいるものの、現状はまだあまり実現できないでいること、コンテンツをつくることの難しさやコンテンツ製作の時間に余裕がないなどの課題をかかえていることもわかりました。
 また、Webサイトの運用に伴う個人情報の扱いに関しては、33.8%が利用者の個人情報を扱っているとした上で、個人情報の保護方針を策定しているところは33.3%、サイト上で保護方針をきちんと明文化しているところは13.9%しかないなど、個人情報保護の体制づくりが遅れていることが示されました。

 本調査は、ITの利活用面から発展が期待される医療・保健分野でのインターネット利用の信頼性確保に関する研究を目的に実施されたものです。昨年に続き、2年目の調査研究となります。方法は、医療機関の中の病院のWebサイトを調査対象に選んで、その運用状況に関する実態調査を行いました。病院名をキーワードに検索エンジンを使って当該病院のサイトを検索、抽出し、その内容を目視で確認した結果、国内に所在する9,122の病院中、40.8%にあたる3,725の病院が主要検索エンジンで検索可能なWebサイトを保有していることが判明しました。この3,725病院に、アンケート調査依頼を送付し、Web上のアンケートページで回答をもらいました。移転先不明等の5施設を除く3,720病院が実対象数となりました。2月18日より3月3日の間に532件の回答がありました。(回答率は14.3%)

 Webサイトを開設運用する目的、Webサイトを通じて利用者に提供される情報やサービスの内容、コンテンツの制作監修体制、課題等について尋ねたところ、サイトの開設目的は、「広報の一環として」「病院の業務や機能を広報することによって患者が受診しやすいようにする」が一番にあげられました。サイトで提供される情報は、病院の診療業務に関する案内が主であり、医師の得意分野や診療実績に関するきめ細かな情報の提供はまだ少ないこともわかりました。
 情報以外のサービスについては、まだ本格的な提供はなされておらず、利用者とのコミュニケーションもまだ活発 には行われていない状況でした。しかし、今は不充分ではありながら、今後、診療に関連したさまざまなサービスを提供していきたいと考えていることもわかりました。その中には、「受診前の一般の人からの相談や問い合わせ」「受診している患者や家族からの相談や問い合わせ」「病院連携、病診連携に関連しての患者の紹介」「受診を前提としない一般の人からの医療相談」「現在受けている治療に関する参考意見(セカンドオピニオン)」などがあげられていました。さらに、サービスの内容によっては、有料という条件となれば、より積極的に提供していきたいとするものもありました。

 次に、Webサイトで提供するコンテンツに関する課題として、「コンテンツを院内スタッフで自主制作しているが、時間に余裕がない」「コンテンツの正確性や質の確保が難しい」「医学情報等のコンテンツが少なく、利用者のニーズに応えられない」「利用者が情報を正しく利用できない時に問題を起こすのが心配である」「コンテンツの制作を外部に頼んでいるので、費用負担が大きい」などがあげられていました。
 Webサイトを通じた外部利用者とのコミュニケーションに関しては、「営業目的、ダイレクトメール等の希望しないメールが多すぎる」「通常のメールではプライバシーやセキュリティの確保が心配である」「利用者との間で安心してコミュニケーションができるシステムが必要」「緊急時や対応の無理なケースがある」などがあげらていました。
 医療分野での個人情報保護のあり方に関心が高まっていますが、今回回答のあった病院では、Webサイトの運営において33.8%が個人情報を取得しているとしていましたが、取得人数は100人未満が61.7%と最も多く、1,000人以上は1.2%と少数でした。しかし、問合せで受ける利用者のE-mailアドレスを個人情報とみていないなど、個人情報の理解の仕方に問題があることもわかりました。さらに、プライバシーの取り扱いに際し、個人情報の保護方針(プライバシーポリシー) を策定しているところは33.3%と3分の1で、またWebサイトで個人情報の保護方針を記載し利用者がわかるように表現しているところは13.9%しかないなど、対応の遅れが目立ちました。

 これらの結果から、医療機関のWebサイトを通じて多様な情報やサービスの提供が行われることが予想される今後に向けて、信頼性確保の観点から、コンテンツやサービスの質の確保、プライバシー保護への取り組み等のいっそうの対策が求められる、としています。
 なお、ITの利活用の促進という社会政策的背景、あるいは医療情報ネットワーク化の発展という世界的な流れから、将来、個々の医療機関を結び、なおかつ国民がアクセス可能な医療情報ネットワークが検討が予想されるとして、わが国においても、患者や国民が主体的に健康維持や医療に参加できるようになるため、患者や国民が自身の健康データにアクセスすることが可能な情報ネットワークが整備されていくことについて意見をきいたところ、62.4%がこうした医療情報ネットワークが構築されていくことが望ましいと考えていました。また、その推進主体については、国(53.0%)、都道府県の自治体(12.6%)の公的主体を1、2位にあげていました。また、この種の医療情報ネットワークを検討するに際しては、「プライバシーやセキュリティの問題について議論を深める必要がある」、「患者や国民にとって、どのようなメリットがあるか明確にすべきである」「相互に情報をやりとりする際のデータの標準化やシステムの統合化の方法について議論する必要がある」などの課題が上位にあげられました。

 報告書では「ITが普及発展する中で、医療・保健分野で積極的にインターネット等の情報通信技術を活用していくには、情報の提供法や個人情報保護等のおいて、対応すべき課題があることが、これまでの調査研究からも示されているが、医療サービスを直接提供する医療機関などにおいては、インターネット等で提供される多様な情報やサービスを患者・国民が有効に利用していくことができるよういっそうの配慮・工夫が求められよう。」と結論提言しています。

 日本インターネット医療協議会は、医師や患者、市民が主となって任意団体としてスタート、平成15年6月にNPO法人としての認定を受けました。理事長は、辰巳治之・札幌医科大学教授、平成16年5月現在、会員数は110名(社)。
 当協議会は、医療の提供者と利用者の間にたって、医療・保健分野でのIT利用の推進とそのための環境づくりを目的としたさまざまな活動に取り組んでいます。情報やサービスの質に関する基準としてeヘルス倫理コードを策定、本基準に基づきWebサイトを審査認定しトラストマークを付与するプログラムを運用したり、本倫理コードの普及をはかるため、eヘルス倫理コードマネージャー、同アドバイザーの資格者を育成する事業を行っています。



参考資料:

今回の研究報告書(全文PDFファイルもあります)

※昨年度の研究報告書(全文PDFファイルあり)も参考ください。

■6月16日開催のJIMAミニフォーラム(総会併催)におこしください。


※本プレスリリースに関する問い合わせは、日本インターネット医療協議会まで。






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