■日時 平成30年3月14日(水) 13:30~17:00
■場所 東京・中央区晴海区民館
<一般口演>
1)日本インターネット医療協議会(JIMA)20年の歩み:「情報薬」への発展 辰巳 治之 (JIMA理事長、札幌医科大学教授) 2)ホルモン療法に関する乳がんWebサイトの質評価 ~Google検索アルゴリズム変更の前後比較~ 中山 寛子(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 健康情報学分野M2) 【背景】 【方法】 【結果】 【結論】 3)安全な医療健康検索サーバーの構築 水島 洋(国立保健医療科学院) インターネット上に提供されている医療情報については、医学的なエビデンスのないものがおおいため、様々な問題が起こっている。JIMAの提供する倫理コードを順守や、ネットパトロールによる監視があっても、課題のある情報を提供しているサイトが多く残っている。一方でがんなどにり患した患者は、藁にもすがる気持ちで、自分の病気に関する情報をできるだけ収集しようとするため、エビデンスのない治療法やサプリメントに誘導されてしまう。 この問題を解決する一つの対策として検索の多くが医療関連というGoogleは、2017年12月に表示順序に関する方針を変更して、かなりの効果があったものの、広告は依然最上部に表示され、不完全なものである。 そこで今回我々は、エビデンスのある情報のみをクローリングして集めることで、エビデンスのある結果のみを提供する検索サーバーの構築を試みた。国や学会などの提供するサーバーやJIMA認定サーバー情報をクローリングして収集し、随時「推薦」と「苦情」を受け付けて審査委員会で追加削除の判断をする。運用に関しては、JIMAとの連携が密に必要となるので、今後の方針に関して議論したい。 4)音声認識対話型ヒューマノイド「NAO」を用いた喘息コントロールテスト(JPAC)について 西藤 なるを(西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニック) 【はじめに】日本小児アレルギー学会では小児気管支喘息の喘息コントロールテストとして「Japanese Pediatric Asthma Control Program(JPAC)」が公開されている。本テストは医師・看護師が問診し確認することを推奨されているが、本調査では音声認識できる人型ロボット「NAO(アルデバラン社製)」にて、JPACが行えるプログラムをSHAREVISON社と開発し、その臨床応用を試みた。 【対象と方法】平成29年2月より当院を受診した気管支喘息患児42名(男児19名,女児23名,平均6.5±4.1歳)のコントロールテストに用いた。アンケートではNAOとの会話のし易さ、患児の喜び、今後の利用意向、自由記載欄に有益性や感想を求めた。 【結果】NAOからの質問には88.1%が答えられた。患児も76.2%が喜び、怖がる患児は11.9%であった。自由記載欄には、待機時間が楽しく過ごせる、次の受診を楽しみにしている、予診がスムーズに行えるなど、好意的な感想が目立つ。 【考案】音声認識対話型ロボットならば、話しかける事で入力が可能で操作を知る必要がない。感情が無いために保護者が医師の反応を観ながら答える懸念がない。本法は医療従事者が少ない医療現場や喘息管理評価が未習得である場合に役立つ可能性がある。音声認識はAI(人工知能)の発達により、さらに自然な会話でやりとりが期待される。またオンライン喘息日誌との連携も視野に入れ開発を進めている。 5)「遠隔診療」を定義があいまいな「オンライン診療」で言い換えて良いのか 山野辺 裕二 (社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 法人本部情報部) 平成30年度の診療報酬改定では、オンライン診療料・オンライン医学管理料の新設が謳われている。ここでオンライン診療とは「情報通信機器を活用した診療(オンラインシステム等の通信技術を用いた診察や医学管理)」とされているが、この語は今回改訂から唐突に現れたもので、定義がはっきりしているとは言えない。「オンライン診療」という語は従来から存在する「遠隔診療」の言い換えだと思われるが、遠隔医療という概念は1990年代から存在しており、英語でもtelemedicine, telecareといった用語が存在する。日本遠隔医療学会による「遠隔診療」の定義は下記である。 —- いっぽう「オンライン診療」は定義があいまいなため、たとえば画像無しの文字だけによるチャットでも「オンライン診療」とされる余地がある。英訳がtelecareなのかどうかもはっきりせず、従来の遠隔医療に関する通知等が有効なのかどうかも明確でない。本発表ではこれら諸問題について明らかにしたい。 6)糖尿病性腎臓病における薬剤サルコペニアの予防について 井上まや 7)労災と健康情報 東丸 貴信(東邦大学名誉教授、横浜平成病院健診センター長) 8)eヘルス倫理コード3.0へのバージョンアップについて 三谷 博明(JIMA事務局長) 要旨: インターネット上の医療・健康情報やサービスの信頼性の確保に長年取り組んできた日本インターネット医療協議会(JIMA)では、当初の医療情報発信者ガイドラインをもとに、わが国でのウェブサイトの自主的基準であるeヘルス倫理コードを2003年に策定、本基準に基づきサイトを評価、認定マークを付与するトラストプログラムの運用を行ってきた。その後のインターネットの利用環境の変化に合わせて、2007年にeヘルス倫理コード2.0へとバージョンアップをはかってきたが、2018年6月から施行される改正医療法に伴う法律環境や利用技術の変化を踏まえ、さらなる改訂を行い、eヘルス倫理コード3.0へとバージョンアップをはかることになった。 eヘルス倫理コード3.0では、このたび、医療機関のウェブサイトが誘引性ある表示として新たに広告規制の対象となったことを踏まえ、新しい医療広告ガイドラインへの準拠を求めるとともに、医療法以外の関連する法令やガイドラインにも留意することを求めている。また、インターネットで自サイトを検索上位にあげるため、サイトの運用やコンテンツの作成にあたって不正な手法を使わないよう、「不正行為の禁止」を追加した。さらに、インターネットを使って医師が診断を行う遠隔医療が普及していくことを念頭に、ケアの内容や条件を利用者に分かりやすく説明することを追記した。そして、サイトの運用においては、提供する情報やサービスの内容や法律環境が絶えず変わっていくことを踏まえ、適切適時にセルフアセスメントを実施、定期的・継続的なメンテナンスを行っていくことを求める項目を追加した。 インターネットの利用環境は今後も変わっていくことが予想される。現在、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といった最新技術が話題となっているが、技術の革新は絶え間なく続き、現在の想像を超えた利用法の登場も予見される。今後も環境変化にあわせ、必要な改訂を行いながらも、対応が難しいと思われる課題については、利用者の立場に立って、安全性と有用性の観点から対応に努めていくことを本倫理コードの基本としている。 JIMAでは、本年4月1日にVer3.0への改訂をはかり、改正医療法にあわせ、6月1日より施行する。また、これに伴い、本基準によりウェブサイトを評価・審査してマークを付与するトラストプログラムの運用法の改訂も行う。 |